【第5期 6月定例会レポート】両立相談窓口から紐解く「行動のきっかけ」~悩みを抱え込まず一歩踏み出すための仕掛けとは~
今期で第5期を迎えたECC Club。4月のキックオフ、5月の「職域における両立支援の誤解」をテーマにした議論を経て、6月の第3回定例会では、多くの企業が課題に感じている「両立相談窓口の運用」の実態を取り上げました。
5月に実施したECC参加企業アンケートでは「相談窓口の運用に難しさを感じている」と回答した企業が20社中12社に上りました。
本定例会では、チェンジウェーブグループ チーフケアオフィサーの木場猛氏を迎え、実際の相談実績データから見える相談窓口の利用実態と、相談者の行動変容を促すためのアプローチを紐解きました。
■インプットセッション:両立相談から見る「行動」のきっかけ
Speaker
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木場 猛(こば・たける)
株式会社チェンジウェーブグループ チーフ・ケア・オフィサー/武蔵野大学別科 介護福祉士養成課程 非常勤講師
2001 年の在学中から現在まで20 年以上、現場の介護職として2,000世帯以上の高齢の方とご家族を支援。2018 年株式会社リクシス( 現チェンジウェーブグループ) に参画。現在も高齢者支援や介護の現場に携わりながら、仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT 」ラーニングコンテンツ作成や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を年400 件、延べ2000人以上の質問・相談に応じている。
■「介護」ではなく「働き続けるための相談」への再定義
まず、最初に木場氏が提唱したのは、相談窓口に対する根本的なマインドセットの転換です。窓口は「介護をうまくやるためのアドバイスを受ける場」ではなく、あくまで「働き続けるための環境を整える相談の入り口」であると再定義しました。
チェンジウェーブグループの両立相談窓口の利用実績データから明らかになったのは、「介護前(予備軍)」と「介護中」で求められる支援の質が決定的に異なるという事実です。

●介護前(未介護層・予備軍):相談件数の約6割を占めていた。親の体調や認知機能低下に対する「潜在的な不安」が主。研修や事前の両立支援施策がフックとなり、早期相談につながる傾向がある。
●介護中:突発的な事態に直面しており、「両立の限界」や「制度利用」など、具体的かつ緊急性の高い課題が集中する。
窓口設置の初期段階は「介護中」の相談に偏りがちですが、それでは組織全体への支援は広がりません。
施策の継続によって「介護前」の段階から接点を持つこと、未介護層からの相談を増やしていく実績の積み重ねこそが、両立支援の厚みを変える鍵となる、と説明しました。
■相談窓口利用で起こる変化、行動につなげる
また、相談の前後では、以下のような相談者の意識の変化が起こりました

チェンジウェーブグループの窓口で対応する「介護プロフェッショナル」は、相談を通して社員の行動やマインドに変化をもたらすよう心がけています。
時間的・精神的な余裕のなさから一人で抱え込み、視野が狭くなりがちな介護中の社員に対しては、ケアマネジャーとの交渉術の伝授や、最適な介護サービスの戦略的な組み合わせを提示することで、複雑な状況に対する「具体的な両立の道筋」を可視化します。
これにより、社員は「すべてを自分で背負い込むプレイヤー」から「外部リソースを率いるマネージャー」へと転換し、安心して仕事を継続できるようになります。
また介護前の社員にとっても、早い段階からプロのアドバイスを受けることで、「今やるべき具体的な準備」が明確になり、パニックにならず仕事と介護を両立させるための確かなファーストステップを踏み出せるという変化が生じているように思います。
■知識と行動のギャップを埋める:人事担当者が両立支援で実践すべきこと
企業がセミナーやeラーニングで「知識」を提供しても、社員が「相談窓口の利用」や「家族との話し合い」といった「行動」に移しているかは先月のアンケートでもわかる通り、潜在化しやすく可視化が難しいため、各社とも課題を抱えていらっしゃるようです。
この「知識」と「行動」の壁を越えるためには、情報をただ届けるだけでなく、「いざという時に思い出せる」仕掛けが不可欠だと、実際の相談窓口の利用経緯からも明白である、と木場氏は指摘します。
続いて、参加者から木場氏に質問が投げかけられました。
Q1:40歳前後の社員向けの介護に関する研修は必須受講にすべきでしょうか?
A:相談員の立場からの希望としてですが、必須受講の方が望ましいと思っています。介護の情報は自ら取りに行く人が少ないため、企業から届けることが重要です。必須化は受講率向上だけでなく、その後の相談窓口利用率にも相関が見られます。「毎年同じ内容でも繰り返すこと」で、予兆を感じた際に相談窓口を想起しやすくなり、早めの行動変容が期待できます。
Q2: 専門機関とすでに繋がりがある「介護中」の社員から寄せられるのは、どのような相談ですか?
A:入院等による制度のはざまで担当者がいないタイミングや、現在のケアマネジャーへの不満、セカンドオピニオン的な相談が主です。難易度は上がりますが、プロ側が手段を示して解決できる領域のため、適切に専門職を頼ることが重要です。
■分科会ディスカッション:各社の知見を「データ」に変える
定例会の後半では、ECC Clubならではの横断的なネットワークを活かし、4つの分科会に分かれて議論を行いました。
単一企業では見えにくい課題を明らかにするため、メンバー各社が持つ知見を集約し、共同アンケートの設問設計を行いました。「未介護層の動機付け」「両立アクションの定義」「経営層へのロジカルな発信」「心理的安全性の醸成」など、テーマは多岐にわたります。
各社のリアルな現場の声を1つのデータに紡ぎ合わせ、実効性のある両立支援のモデルを構築する。
このECC Clubの取り組みは、単なる情報交換を超え、これからの両立支援のスタンダードを作るための重要なステップとなります。
今後は、各分科会での深掘りを行い、そこで得られた知見や成果は、2026年11月6日開催の「ビジネスケアラーカンファレンス2026」にて発表予定です。
今後のECC Clubの活動進捗に、引き続きご注目ください。
