【第5期 5月定例会レポート】誤解の多い職域での仕事と介護の両立支援~企業に求められる取り組み~
今期で第5期となるECC Clubは、4月21日にキックオフを迎え、5月は第2回目として全体定例会を実施しました。
定例会のテーマは、「誤解や難しさの多い職域における仕事と介護の両立支援」です。法改正に伴う情報周知が進む一方で、現場や社員の間で未だに生じやすい「仕事と介護の両立」に関する誤解について、有識者による講演を実施しました。
また、両立支援施策の推進担当者が直面する「難しさ」について、参加メンバーでディスカッションを展開しました。
講演:誤解の多い仕事と介護の両立支援~企業に求められる取り組み~
定例会前半では、「仕事と介護の両立支援」における現場の誤解と、企業・社員それぞれに推奨される具体的な対策について、厚生労働省「令和6年育児・介護休業法改正を踏まえた実務的な介護両立支援の具体化に関する研究会」で座長を務められた、東京大学名誉教授であり中央大学ビジネススクール・フェローの佐藤博樹氏に講演いただきました。

佐藤 博樹 (さとう ひろき)氏
東京大学名誉教授、中央大学大学院戦略経営研究科教授、中央大学ビジネススクール・フェロー
講演では、特に誤解が生じやすい以下のポイントについて、ECC5期参加メンバーである両立支援担当者へ解説した上で、職域における両立支援のあるべき姿を明示しました。
1.介護両立支援における重要な誤解:情報提供の盲点(40歳の壁)
介護保険料の給与天引きが始まる40歳の時点で、社員は自身が被保険者であることや制度内容を知らないケースが多く、企業側からの周知が不可欠です。育児と異なり介護は「突然始まるリスク」であるため、課題が表面化する前の事前準備が重要視されています。
2.「介護休業」の目的の誤解:プレイヤーとマネージャー
介護休業(法定93日)は、育児休業のように「本人が直接介護をする=プレイヤーになる」ための期間ではなく、「仕事と介護を両立させる体制・環境を構築する=マネージャーになる」ための準備期間として正しく認識されることが必要だと佐藤氏は述べました。
介護離職は、経済的・精神的な困窮を招くため、個人の意思を尊重することも重要ですが、「仕事を継続すること」こそがケアラーにとってリスク緩和策となることを、担当者は認識しておくべきだと強調しました。
3.企業と社員の適切な役割分担
企業には、個別の介護アドバイスに終始するのではなく、組織のパフォーマンス維持を目的とした「働き方の調整」が求められます。急な休みにも対応できる職場風土の醸成や、制度の目的を明確に伝える名称への変更は、社員の行動変容を促す有効な手段です。
また、社内相談窓口は、専門的な解決の場ではなく、地域包括支援センターなどの外部専門家へ繋ぐ「プラットフォーム」として機能させることが現実的です。一方、社員側は、親が元気なうちに「リスクタイム」の把握や、親の資産からの支出となる介護費用のための経済状況・口座管理の明確化、介護認定に不可欠な「かかりつけ医」の情報の確認など、事前の備えを進めることが望まれます。
【ディスカッション】データから見る各社の施策と「実行の難しさ」
定例会後半では、参加企業26社のアンケート結果から、施策の実行の難しさを取り上げ、講演のインプットも加味したディスカッションを参加メンバーで行いました。
施策実行の難しさと最大の壁
参加企業26社のアンケート結果では、従業員セミナーやeラーニングによる知識提供は高い効果を実感する一方で、一歩踏み込んだ支援施策には課題が集中している現状が浮かび上がりました。

特に、相談窓口については、多くの企業がジレンマを感じています。
窓口を設置しても、「会社に相談する心理的ハードル」の高さから、20社中12社が運用に難しさを感じています。
また、最大の壁は「未介護層の自分ごと化」であることもアンケートからわかりました。
最も多くの企業が苦慮しているのは、介護特有の「先送り心理」や平均年齢層の若さからくる「未介護層への関心喚起」です。
これらの課題を踏まえ、今後は「介護」と銘打たずライフプラン研修として情報を触れさせる工夫や、管理職の理解促進を通じた心理的安全性の醸成が、未介護層の行動変容を促す鍵となるとの意見が出ました。
今回のディスカッションで得られた共通の課題感や「今後実施していきたい施策」のアイデアは、今後の分科会活動でさらに深掘りしていき、2026年11月6日に開催されるビジネスケアラーカンファレンス2026にて各分科会の活動発表を行う予定です。
参考:昨年度のECCビジネスケアラーカンファレンス2025の開催レポートはこちら
